逓信省読み方ていしんしょう)という概念がちょっと分かりにくいかも知れませんが、郵便と電話を担当していた省といえば想像がつくと思います。郵便部門は郵政省に、電話部門は電電公社から現在のNTTになりました。

大正から昭和初期にかけて、日本の建築様式がゴロっと変わる時期でもあったので、非常に注目する建物が沢山あります。時代背景から言いますと、建築はが主体であったこと。そのの建築とは、明治維新から外国人設計技師を招いて東大から次々と設計技師が生まれた時期、日本の公共建築はコテコテ装飾の西洋建築の模倣でありました。それが一般に言う近代建築です。

そんな様式があたりまえの時代に、やっぱり「これはおかしい」と思うような人が現われるんですね。大正7年〜9年辺りの東大卒業生が、分離派と呼ばれるデザインを確立する。インターナショナル・スタイルと呼ばれる様式が日本にも輸入されてくる。平面と立面の全く関連の無いパッケージ・デザインに一石を投じるわけです。

近代建築現代建築という言葉はあっても、その境目にきちんとしたラインを引くことは出来ません。ひょっとしたら吉田鉄郎(読み方よしだ てつろう)氏が手がけた建物辺りから現代建築と呼んでもいいのではないでしょうか。

外観東南角

なんか古臭い建物だなぁ、と思えばそれまでですが、現在の様式とあまり変わってないでしょ。つまり、現代建築の原型とも言い換えることが出来ます。近代建築のパッケージ・デザインとは違って、国際様式なのです。

東面玄関口内部

といっても、柱がここまで強調された現代建築はあまり見かけないわけでして、まだまだ模索の時代でもあったのでしょう。柱よりも壁の位置が少し奥に入っているところで、日本建築の真壁(読み方しんかべ)を意識しているような気がします。(現在の日本建築は大壁(読み方おおかべ)、柱を見せない施工をします。)
中にも入ってみました。今でも現役の郵便局です。

南西角

建物を別の角から見てみる。階段部分はガラスが全フロアーに渡って貼ってあります。いまでこそ何の変哲も無い施工ですが、当時のデザインから考えるとものすごく画期的なわけです。
この建物以前に、吉田鉄郎氏は東京中央郵便局も手掛けています。今回の大阪中央郵便局より6年前に施工されていますが、基本的に同じような様式をとっています。東京中央郵便局の方も現代建築の原型を見せていますが、コーナ処理を見ているとまだまだ近代建築の匂いが少し残っています。その6年後にこの大阪中央郵便局を設計してますから、比較してみると面白いですよ。

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建物情報(※現存しません)

建物画像
大阪中央郵便局
建物名
大阪中央郵便局
設計
吉田鉄郎
読み方よしだ てつろう
所在地
大阪府大阪市北区梅田3-2-4
用途
郵便局
竣工
1939年(昭和14年)
構造
RC造6階建

作成者 Mitsuo.K
個人サイト Mの憂鬱
作成日 2000年05月06日
更新日 2008年07月12日
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