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スペインインデックス

バルセロナ博ドイツ館 German Pavillion International Exposition

2000/02/22 Last renewal 2001/07/28
 この建築は1929年のバルセロナ万国博覧会のドイツ館として建てられたパビリオンで、ミース・ファン・デル・ローエの設計によるもです。当時のパビリオンは会期の終了と共に撤去されていましたが、ミース財団により1986年に全く同じ位置に復元されました。全く同様の材料で作られていますが、今あるのはレプリカということになります。 このパビリオンは外部のある程度離れた位置から見ると、水平な壁のようにも見えるのです。基本造型は単純であることがわかるでしょう。遠目に一見した印象は建築というよりも石材の細長い壁が据えられているようでした。この時思ったのが、近代建築というより美術工芸品だなと。もともとミースはこのパビリオンを建てるに当たって強くロマン古典主義を意識していたといいますから、やはり根本は近代というより古典であったのでしょう。これが内部に入ってみると空間も材料も極めて対比していることが判るのです、実にみごとな矛盾の共存といったところでしょう。明らかに近代と古典が意識されいることもまた感じれるのです。  ガラスのスクリーンと大理石の化粧張、クロム鋼の垂直材と外壁の写し出し、外部の池と内部の池(外部の池は風が水面を揺らがせ写り込んだ象を歪めるのみ対し、内部の池は小さく壁によって囲まれいるため鏡としての性格が強調される)、フラットルーフと独立柱(パビリオン自体が特定機能を目的として作られたものではないため天井には照明一つさえも取り付けられていない、そのため空間内部の水平感は非常に強い)、などが上げられます。また、ガラス面は床から天井まで継ぎ目なく1枚て使用しているため、張り出したルーフがガラス面で室内外を区切ってはいるものの、その強い水平感は室内の区切られた面として意識させず、外部とのつながりの方を強く意識してしまいす。パビリオンには2枚のフラットルーフが設けられていますが、外部の池もまた水平面を強調したものであるて、3枚のスラブが存在していると考えることができるのではないでしょうか。2枚の天井スラブと床に埋め込まれた池、こうした強い水平感のある建築ではあるのですが、池の反射を利用したガラス面の役割があるため、水平空間の強いパビリオンの空間構成において、垂直空間もまた強く意識させられるのです、こうして空間はさらに複雑なものとして感じることになります。このパビリオンの内部空間自体はそれほど大きな空間ではなく、むしろ小さいと言ってもいい程なのですが、一見単純に見えるこの建築ですが、その複雑な空間構成を見ると、近代建築の巨匠と言われる所以がわかるような気がしました。パビリオンは一見すると単純に見えると言いましたが、これはパビリオンの建っている敷地がバルセロナのカタルーニャ広場とカタルーニャ美術館の軸線上に設けられた広場の奥であるからで、この軸線にあたる街路が非常に大きく、パビリオンはこれからすると100mは離れているからです。さらにパビリオンが軸線と平行しているために、パビリオンが人々の目に映るときは比較的離れた位置に見え、細長く写るという訳なのです。パビリオンは基段からわずかに3m程度の高さであり、基段を含めても4.5mもありません。また壁の高さは一定に揃えられ、薄い天井スラブが乗せられているだけなので、主なテクスチャーである石材だけが認識されることになるのです。ですから私の第一印象が美術工芸品だったという訳なのです。さらに、正面の広場は方位でいうと北側に当たり、パビリオン正面は常に陰となります。日差しを受けないガラス面は光を反射させるわけでなく、遠目ではガラス面としての存在を意識させずに、その横に連続する石のテクスチャーと同化して見えてきます。ミースがあえて北を正面としたのは意図していたのでしょう。この環境のロケーションをパビリオンとそれに対する建築すべての空間として構成していたことになります。  パビリオンに近づくとき、横たえた石から徐々に建築が現われ、テクスチャーの違いを除々に表情として感じます。長く張り出した天井スラブ、計算され割り付けされた石材、大きくはめ込まれたガラス、そうして周辺環境全体からパビリオン内部へと誘われていくことになります。この建築は1929年という工業大量生産化へ進んでゆく過程の中で生まれてきたにもかかわらず、モダニズムというよりむしろアカデミックな印象が強いものです。かといって単なるロマン古典主義の懐古でもありません。ステンレスによる十字柱、ガラスの壁面、この点は鉄とガラスによる近代工業の技術によるところであります、全面石材による壁が古典的な印象を強くしているのも確かですが、プランは構成主義としての側面が強く現れています。こうしてバルセロナ・パビリオンを見て感じたことの一番の点なのですが、この当時の近代モダニズム構成主義建築とは、その根本が工業ではなくやはり工芸であることを実感したことです。バルセロナ・パビリオンへは、メトロのスペイン広場(Pl.d`Espanya)から南へカタルニヤ美術館(元バルセロナ博政府館)への途中にあります。パビリオンまでは約500m程です。


バルセロナ博 ドイツ館 
German Pavillion International Exposition Barcelona,Spain

設計 ミース・ファン・デル・ローエ Mies van Der Rohe
用途 万国博覧会パビリオン

所在地 スペイン バルセロナ
Barcelona, Spain

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