神戸モスク
THE KOBE MUSLIM MOSQUE

阪神地方には、戦前から千人近いイスラム教徒がいたといわれます。貿易港神戸でヨーロッパ貿易によって財をなしたインド貿易商たちは、1929年からモスク建設のための計画を開始し、自ら資金を出し合い、ロシア革命を逃れてやってきた大勢のトルコ・タタール人とともにモスク建設を進めます。こうして神戸モスクは1935月、日本最初のモスクとして完成しました。

神戸モスクは、神戸の山手側、異人館が点在する地区の東端にあって、街の観光案内板にも記載されており、観光スポットのひとつになっているようです。このため、この日も外観の写真を撮っている人がかなりいました。イスラム教徒でなくても内部の見学は可能ですが、事前に電話で申し込んでおくのがよいでしょう。写真撮影は2003年4月です。

なお、興味のある方は、もうひとつの本格的モスク建築である東京ジャーミイも併せて、ごらんください。






建物名: 神戸モスク
THE KOBE MUSLIM MOSQUE
所在地: 神戸市中央区中山手通2-25-14
設計: ヤン・ヨセフ・スワガー
JAN JOSEF SVAGR
施工: 竹中工務店
用途: 寺院
構造: 鉄筋コンクリート造、3階建
工期: 1934年4月〜1935年9月2日


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モスク外観
トアロードから、右手に折れると、
歩道を含めて幅10メートルほどの狭い道に面して、神戸モスクは位置しています。この地区は住宅街で、マンション、官舎、戸建て住宅などがぎっしり建っています。

設計はA.レーモンドの弟子で、チェコ人のヤン・ヨセフ・スワガーです。レーモンドの元では構造技術者であったようですが、独立してからは意匠設計を手がけ、横浜の山手カトリック教会、北海道のトラピスト修道院や個人住宅などを設計しています。かなり器用な人だったようです。
正面ファサード
重厚かつ端正にまとまった美しいデザインです。このモスクは全体のプロポーションはインド的に思えますが、ミナレットの形と全体の荒削りな感じ、さらに少し黄色がかった外壁の色の印象からエジプト的な雰囲気を濃厚に感じさせます。
側面
狭い敷地に建っていますが、側面もきれいにまとまっています。各部を見ていくと、いろいろな国のモスク様式を混合したものであることに気がつきます。

正面イーワーン(門型のファサード)
ひさしがあるので、わかりにくくなっていますが、これはインド式の表向きイーワーンであることがわかります。

ミナレット(塔)
しかしながら、ミナレットはエジプト式です。断面が下から四角、八角、円に変わっていくところなど、凝ったつくりです。

ドーム頂部
しかしながら、屋根が銅板葺きのモスクは他には見たことがありません。普通はタイル、煉瓦、あるいは鉛板です。ただ、日本の近代洋風建築におけるドーム屋根は銅板葺きが多いので、見慣れているせいか、違和感は感じません。屋根の錆は照明器具から出たものです。

外壁仕上げ
離れて見ると砂岩のようですが、近くで見れば擬石です。インド砂岩と言えば赤砂岩ですが、これは黄色っぽくしているため、エジプト的な雰囲気が漂います。
神戸モスクのなぞ(その1)
この門から入ります。正面奥の扉がモスクの入り口です。このモスクの正面は北向きです。一方、メッカは西の方角です。ということはこの扉から入って、まっすぐ向くと南向きになるわけで、メッカと違う方向に礼拝することになります。内部はどうなっているのでしょうか。

正面扉
重そうな木製扉です。彫刻がしてあります。扉の上には、KOBE MUSLIM MOSQUEと書かれています。実はこの扉は閉まっており、入り口は別にあります。

イスラム文化センター
隣の奥にある鉄骨造の建物です。ここでは各種講座を開催しています。
文化センターとモスクの取り合い
文化センターはモスクと一体となっており、この入り口を通ってモスクに入ります。

モスク内部
モスクの廊下
文化センターから入って、2回折れるとこの廊下に出ます。右手が礼拝室です。廊下でも整列して礼拝できるように、絨毯には升目模様が織り込まれています。
礼拝室入り口
ここから入ると礼拝室です。奥にメッカの方向を示すミフラーブが見えます。ということはこの礼拝室は...
神戸モスクのなぞ(その1)回答
建物が南北軸であるのに対し、礼拝室は90度振って、西を向いています。これでメッカの方向を向いて、礼拝ができるわけです。
礼拝室内部
中央にミフラーブ、その右手にミンバル(説教壇)が見えます。
ミフラーブ詳細
大理石でできています。装飾模様もあまり複雑ではなく、あっさりしたものです。

ミフラーブ外側
そんなわけで、建物西側面にミフラーブ背面の出っ張りがあります。
礼拝室絨毯
ここにも一人ずつ入れるように升目が描かれています。ミフラーブを模様まで含めてそっくり模している手のこんだものです。
ミフラーブ頂部
放射状の模様です。貝でしょうか、朝日のようにも見えます。
神戸モスクのなぞ(その2)
見上げると、なんとドームがない!外観では見えていたドームはどこに行ったのか?
神戸モスクのなぞ(その2)回答
礼拝室が建物軸線と直交していて、さらに中心からずれていることから、ドームを外観中央に持ってくると、礼拝室柱割との食い違いが生じて、内部にドーム空間を設けることがむずかしくなるのがわかります。
礼拝室(背面)
2階にバルコニー席があります。文化センター側の階段を利用して上がります。
礼拝室2階
ここは女性用です。東京ジャーミイと同じです。
礼拝室上部
この礼拝室は、モスクによくあるようなごちゃごちゃした感じがなく、清楚で美しい空間になっています。
神戸は寒い
窓下にあるのはファンコイルユニットとガスストーブです。

その他
神戸モスクのなぞ(その3)
このモスクの3層目(黄色で示す部分)は何のためにあるか。なぜ階高がこんなに低いのか。
神戸モスクのなぞ(その3)回答
ドームを梁で受けているので、ドーム受けの小梁が欲しくなります。そうするとこの写真のようなきれいな直天井にはなりません。そこでドーム受用と礼拝室天井用の2重の梁・スラブ面を設けた、つまり外観のドームと内部柱割りとの食い違いを調整する空間が必要であった、ということでしょうか。でも「天井を張ればいいじゃないか」といわれれば、うーむ、ごもっともです。結論:わからない。
壁に貼ってあった写真
創建当時、1936年の写真です。モスクの後ろ側に木造の付属建物があったことがわかります。木造部分は戦災で燃えてしまったそうですが、モスク本体は大きな損傷もなく残りました。
阪神淡路大震災でも、後ろ側の小さい塔(インド様式ならばチャトリ)が壊れただけだっといいます。
キタノグラッセリーズ
モスクの向かい側にあります。イスラム食材を置いています。おみやげにどうぞ。

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最終更新日:2003年5月19日

作成者:じいきえん

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